活動内容 2023年

第1回若手口腔外科医交流会

大阪私学会館

男女共同参画

ー 子育てと仕事の両立 ー

1)座長久保田(梅村) 恵理

「子育てと仕事の両立」

園山(大迫) 里江(島根大学医学部 歯科口腔外科学講座)

「細く長く続けるために ー大切な3つのことー」

伊藤 奈七子(広島大学 顎・口腔外科)

2)座長竹部 祐生亮

「男性口腔外科医の育児休業を考える。」

佐世 暁(名古屋大学医学部附属病院 歯科口腔外科)

「進み始めた大学歯科口腔外科のダイバーシティ」

渡邊 純奈(名古屋大学医学部附属病院 歯科口腔外科)

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第68回(公社)日本口腔外科学会総会・学術集会

大阪国際会議場

ダイバーシティ推進委員会シンポジウム

ー ダイバーシティ・アンコンシャスバイアスについて ー

座長
山城 正司
矢郷 香

座長のことば
ダイバーシティとは「多様性」のことであり、組織においては「多様な人材を活かす戦略」と位置づけられています。企業、教育機関、政府でダイバーシティ推進が掲げられてきましたが、2023年日本のジェンダーギャップ指数スコアは横ばい、順位は世界125位に下がり過去最低となっています。医療界での推進も遅れており、特に外科系では急務を要する深刻な問題です。ダイバーシティ推進を阻む最大の要因に、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)があり、特に管理指導者はバイアスの存在をまず意識することが必要と考えます。シンポジウムでは、専門家のパク・スックチャ先生(株式会社アパッショナータ)にご講演いただき、吉岡徳枝先生に実態・意識調査報告、池邉哲郎理事長より特別発言をいただきます。これまで男女共同参画は、出産育児にかかわる女性以外の関心は薄く、他人事と考える人が少なくありませんでした。まずは知ること、そして全ての人に関わることを自覚することが大切です。

GE-1ダイバーシティの推進を阻むアンコンシャスバイアスとは

パク・スックチャ(Sook Ja Park)

GE-2ダイバーシティ推進委員会「働き方やダイバーシティについての意識・実態調査」

吉岡 徳江

GE-特別発言

池邉 哲郎

GE-1ダイバーシティの推進を阻むアンコンシャスバイアスとは

講師:パク・スックチャ(Sook Ja Park)

株式会社アパショナータ 代表/ ダイバーシティ(多様性)&ワーク・ライフ・バランス コンサルタント

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パク・スックチャ(Sook Ja Park)

【経歴】

日本生まれ、韓国籍。
米国ペンシルバニア大学経済学部BA(学士)、シカゴ大学MBA(経営学修士)取得。
米国と日本で米国系企業に勤務後、日本に戻り米国系運輸企業に入社。
同社にて日本・香港・シンガポール・中国など、太平洋地区での人事、スペシャリストおよび管理職研修企画・実施を手がける。
2000年に退社し、日本で最初にワーク・ライフ・バランスを推進するコンサルタントとして独立。企業での社員の意識改革、働き方改革及び教育研修に携わる。
同時に、米国とアジアに精通したグローバルな経験を活かし、急激に進むグローバル化と複雑化する多様性に適切に対応すべくダイバーシティ(多様な人材活用)の専門家として、多様な人材マネジメントと受容的環境構築(インクルージョン)への意識・風土改革及び教育研修に携わる。企業メリットをもたらす手法で進める在宅勤務導入コンサルティングで実績を出し、日本での在宅勤務(テレワーク)の普及に向け、執筆や啓蒙活動にも取り組む。

著書

「アンコンシャス・バイアス—無意識の偏見— とは何か」(ICE新書)

「アジアで稼ぐ『アジア人材』になれ」(朝日新聞出版)

「会社人間が会社をつぶす-ワークライフバランスの提案」(朝日選書)

共著

「CSR「働きがい」を束ねる経営」日経CSRプロジェクト編(日本経済新聞社)

【講演の目的】

  1. アンコンシャス・バイアスについての正しい理解を深める
  2. アンコンシャス・バイアスのもたらすネガティブな影響を理解する
  3. アンコンシャス・バイアスへの対策を学ぶ
1)アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)の基本的知識

バイアス(偏見)とは、ある特定の人、集団、対象などに対し、十分な根拠なしに持つ偏った判断・意見、等です。そしてアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)とは、自分自身が気づかずに持つ偏った見方・考え方のことです。

私たちは皆、バイアス(偏見)を持っています。また、バイアスには瞬時の判断で身を守るなど、それなりの機能があり、バイアスを持つこと自体が悪いことではありません。しかし、人間は、自分が見たいものしか見えず、他のことが見えていないことがあり、そうしてゆがんだ事実をベースにして評価を行うと、判断を間違うことがあります。私たちの脳には死角があり、それが事実をゆがめてしまうことがあることを認識することが必要です。バイアスは完全に除去することはできませんが、意識してネガティブな影響を抑えることはできるのです。

私たちの情報処理には、無意識(瞬間的、自動的、直感的、速い)なもの、意識(合理的、論理的、分析的、遅い)なものがありますが、99%は無意識に情報処理を行っていると言われています。無意識の情報処理は、大量に流れ込んでくる情報を、素早く効率よく処理するために必要ですが、しばしば正確さを欠き、誤った判断となります。特に、人の評価や対応においては、意識的に時間をかけて、合理的、論理的に行うことが大切です。また、他人のバイアスはよく気付きますが、自分のバイアスは気が付きにくく、人によって持つバイアスは異なることにも注意が必要です。

2)アンコンシャス・バイアスの及ぼす影響
【組織への影響】

米国の名門オーケストラが楽団員の採用を、ブラインド・オーディションという形式で、受験者の演奏のみで、姿が見えないように変更したところ、それまでより、女性の合格率が大幅に上がりました。オーケストラの審査員たちは、公平に演奏だけで評価していると信じていましたが、男性の方が優れている、と気づかぬうちに身につけた思い込み(アンコンシャス・バイアス)が、彼らの判断に影響を与えていたことが明らかになりました。

アンコンシャス・バイアスは、組織において、意思決定、作用、評価、昇進、リーダー選抜、人材育成などの人材マネジメントだけでなく、仕事の割り振り、役割分担、会議での発言、提案への実行など、日常的な職場へも大きな影響を及ぼします。

【個人への影響】

視線、しぐさ、声のトーン、顔の表情、話し方、会話の量等の、なにげない態度・ふるまいは、相手に多くのメッセージを与えます。偏見は、なにげない表情や態度に表れるのです。それが積み重なって疎外・差別・ハラスメントにつながります。そして、人間関係が悪化し、エンゲージメントは低下、停滞感が蔓延し、チーム、個人のパフォーマンスは低下していきます。

3)アンコンシャス・バイアスへの対策
【組織としてできること】

まず、トップ、指導者、意思決定レベルの人たちが、自分の持つバイアスを認めて、ダイバーシティ推進に積極的に取り組むことからスタートします。バイアスが不公平性を生むことを理解し、公平性を確保する仕組みづくりを行うことが必要です。具体的には、例えば、面接においては、同じ質問をする、事前に評価基準を決めておく等です。

●組織の対応策 2つのポイント

  1. バイアス教育を行い、知識と意識を高めること
  2. 公平性を確保すること
【個人としてできること】

大切なことは、誰もが尊重(respect)され、受容(include)されることです。

●個人の対応策 5つのポイント

  1. 認める:バイアスを持っていることを認める
  2. 意識する:「無意識」を「意識」する
  3. 間をおく:人を判断・評価・対応する時はゆっくり考える
  4. 言葉を変える:偏見、決めつけ、差別的な言葉を使わない
  5. 受け入れる:相手を尊重して、受容する行動を取る

相手を尊重して受け入れるためにどのような言動をとりますか?
一番大切なのは、皆さんの明日からの行動です。

参加者の感想
  • 女性に対してのバイアスは、良いモノもありますが、悪いモノがはるかに多い事に気付かされました。 ありがとうございました。(60歳)
  • パク先生の話が大変面白かったです。こういうお話をきける機会はあまりないので、良かったです。
  • とても勉強になりました。女性でありながら女性に対するバイアスがあることを自分で自覚していますが、これを無理やりなくそうとするとかえって不公平になることもあり、難しい問題だと感じています。
  • アンコンシャスバイアスの恐ろしさを教えて頂きました。自分は今までアンコンシャスバイアスにより守られてきたのかも知れないとも感じました。今後、無意識を意識する様心がけます。貴重な講演でした。ありがとうございました。
  • なぜ人がバイアスを持ってしまうのか、それは防衛本能のひとつなのかもしれないと、講演を聞いて思いました。具体的な面白い事例がたくさんあって、とても勉強になりました。またこのような企画を立ち上げていただいて、口腔外科の専門医制度にも触れていただいて、口腔外科を志す女性としてはとても心強い一時間半でした。ありがとうございました。
  • 大変勉強になりました。出席してよかったです。 女性としていろいろ考えることがありました。 ありがとうございました。
  • 現在勤務している医院の上司がバイアスまみれなので、このような講演を上司や院長クラスの人にこそ聞いて欲しいと思いました。 同時に、自身がいかにバイアスをなくして人と付き合うことができるか、考える良い機会となりました。
  • 大変勉強になりました。
  • 日常生活の中で無意識にバイアスをかけてしまっていることを痛感いたしました。
  • 日常的に、無意識のバイアスをかけていることがあると思うので、意識的に行動しようと思いました。