活動内容 2024年

若手口腔外科医交流会第2回学術集会

ホテルメトロポリタン盛岡 ニューウイング

シンポジウム2

ー 子育てと仕事の両立 ー

座長久保田 恵理(済衆館病院 歯科口腔外科) 伊藤 奈七子(広島大学病院 口腔腫瘍制御学)

S2-1 「ママ口腔外科医のサステナブルな働き方を考える」

藤村 愛 1,2)、三宅 実 2)、柚鳥 宏和 1)、古木 良彦 1)
1)香川県立中央病院 歯科口腔外科
2)香川大学医学部 歯科口腔外科学講座

S2-2 「市中病院口腔外科勤務医における育児休業取得の試み」

荻須 宏太 1)、太田 優也 1)、安江 玲太 1)、村上 琴音 1)、安藤 友二 2)、 若山 博隆 1,3)、金子 順哉 4)、丹羽 翔太郎 5)、夫 才成 1)
1)掛川市・袋井市病院企業団立中東遠総合医療センター 歯科口腔外科
2)藤枝平成記念病院 歯科口腔外科
3)西尾ファミリー歯科口腔外科
4)名古屋大学医学部附属病院 歯科口腔外科
5)岐阜大学大学院医学系研究科感覚運動医学講座 口腔外科学

S2-3 「口腔外科における仕事と育児の両立」

河上 真緒、上田 順宏、山川 延宏、桐田 忠昭 奈良県立医科大学 口腔外科学講座

「進み始めた大学歯科口腔外科のダイバーシティ」

渡邊 純奈 (名古屋大学医学部附属病院 歯科口腔外科)

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第69回(公社)日本口腔外科学会総会・学術大会

パシフィコ横浜 会議センター

ダイバーシティ推進委員会シンポジウム

ー 「歯科医師の働き方改革とダイバーシティの実践」 ー

座長
大場 誠悟(昭和大学歯学部口腔外科学講座顎顔面口腔外科学部門)
石橋 美樹(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンターがんオーラルケア・歯科口腔外科)

座長のことば

本年度から本格的に始まった「働き方改革」は、医療の質と効率性の向上を目指し、重要な課題として注目されています。しかし、その実践が医療者の業務効率や患者への利益に直結するかは不透明であり、さまざまな意見が存在します。

本シンポジウムでは、この複雑な問題に対する多角的な視点を提供します。大場先生からは所属施設での具体的な取り組み、萩須先生、薄木先生からはご自身の経験から男性の育児休業取得の現状と課題について報告します。さらに、池田先生からは海外と日本の管理者を経験した基礎研究者として、ダイバーシティ推進の比較分析を通じて、科学における多様性の重要性を探ります。

同時に、これらの取り組みが科学の発展にどのように寄与するかについても議論します。本シンポジウムを通じて、会員の皆様と共に、医療の未来像を描き、実践可能な改革の方向性を模索したいと考えています。

GE-1「働き方改革」

大場 誠悟 (昭和大学歯学部口腔外科学講座顎顔面口腔外科学部門

組織における「ダイバーシティ(Diversity)」すなわち「働き方の多様性」が重視されるようになって久しいですが、なかなか日本国内では浸透しきれていないのが現状ではないでしょうか。diversityの推進の上で必要不可欠であるワークライフバランスの実現、すなわち「働き方改革」の言葉だけが独り歩きし、決して実践ができているとは言い難いと思います。

2017年に日本政府が「働き方改革実行計画」を策定し、2019年より「働き方改革関連法」が順次施行され、ワークライフバランスの実現のために、企業、病院、種々の職種にさまざまな提案を投げかけてきています。医療現場では、2024年4月より「医師の働き方改革」が開始しました。「働き方改革」とは、労働時間や労働環境の見直しを図り、組織全体を活性化させることを目的としているはずですが、皆さんの環境はいかがでしょうか。胸を張って実践できていますという施設はどれくらいあるのでしょうか。では、なぜ実践できないのでしょうか。どのようにしたら実践できるのでしょうか。

「働き方改革」のためには、我々の「仕事に対する考え方・取り組み方」も改革する必要があるかもしれません。より効率の良い働き方を検討する必要があると考えます。

本シンポジウムでは昭和大学と長崎大学における「働き方改革」への取り組みに対する具体的な例を紹介し、どのようにしたら口腔外科のみならず医療の現場で活躍される方々の「働き方改革」が実践可能になるのか皆で考えていければと思います。

GE-2「男性口腔外科医の育児休業取得を考える ~市中病院勤務医の視点から~」

荻須 宏太(掛川市・袋井市病院企業団立中東遠総合医療センター歯科口腔外科)

近年、ダイバーシティ(多様性)という概念が社会に広く浸透しつつあるなか、男性の育児休業取得についても推進が叫ばれている。2022年10月に育児介護休業法が改正され、新たに産後パパ育休(出生時育児休業)が創設された他、従来分割取得ができなかった育児休業についても2回に分けて取得できるようになるなど、男性の育児休業取得を後押しする施策が続々と打ち出されている。一方で男性の育児休業取得率は2022年度時点で17.13%であり、女性の80.2%と比較すると低水準にとどまっている。今後、国は企業に対し男性育児休業について目標設定を義務付ける方針であり、男性の育児休業取得は社会的な流れで我々医療者も例外ではない。一方、市中病院含め口腔外科では十分な人員・体制が整っている施設ばかりとは限らず、男性口腔外科医が育児休業取得を思い立ったとしても実行に移すことのできる施設は限られているように感じる。また、人員が整っていたとしても休業期間中は他歯科医師の負担が増大しうることも課題である。自身は卒後11年目で市中病院口腔外科に勤務する歯科医師であるが、今回第2子の出産にあわせて科内で初めて育児休業を取得することとなった。育児休業取得に漠然とした不安もあったが、他科医師が先行して育児休業を取得していたことや診療科全体でのバックアップもありハードルが比較的低く、休業期間中は育児に専念することができた。その中で要した準備や育児休業取得のメリット、見えた課題について述べたいと思う。

GE-3「働き方改革と口腔外科勤務(育児のために休暇を取得して感じたこと))

薄木 崇介(公立学校共済組合近畿中央病院歯科口腔外科)

ダイバーシティ促進のなかで、男性の育児休暇(以下育休)取得が近年、注目されています。2019年4月1日より順次施行されている働き方改革関連法は、長時間労働時間の減少、年次有給休暇取得を推進することなどで、各個人にあったライフワークバランスの実現を目標とする法案として設立されました。なかでも育児休暇、育児休業は、原則1歳未満のこどもを養育するための休業で、育児・介護休業法という法律に定められています。さらに2022年10月1日、産後8週間以内に4週間を限度として2回に分けて取得できる産後パパ育休制度が定められ、1歳までの育児休業とは別に取得できることになりました。これらの法案改正により2022年度の育児休業取得率は女性が80.2%、男性が17.1%でしたが、2023年度の育休取得率は速報値ではありますが、男性の育休取得率は46.2%、男性の育休等平均取得日数は46.5日と明らかに増加傾向にあります。しかし、日本医師会によると2022年度の男性医師の育休取得率は17.13%と報告されており、企業に比較すると大きく差があります。当院の2023年度の男性職員の育休取得率は病院全体としては7名中5名(71.4%)で全国平均を満たしている一方で、医師のみに限局すると3名中1名(33%)と取得率が大きく低下します。一般に男性の育休取得率が低い理由の上位として、育休を取得しづらい雰囲気がある、職場が人手不足といったものが挙げられています。私の勤務先は、常勤歯科医師3名、研修医1名体制で、上司、スタッフに事前に相談し、2週間の休暇を取得しました。妻の出産は予期せぬ困難を伴い、実際に私が育児に従事した時間は限られていましたが、職場の理解と支援に深く感謝しています。私たちの経験から、男性の出産・育児における積極的参加の重要性を感じていただければ幸いです。

GE-4「多様性は本当に科学の発展に貢献するのかを再考する」

池田 史代(大阪大学大学院生命機能研究科)

みなさんは、ダイバーシティーという言葉を聞いて、どのような印象をお持ちでしょうか?多様性という日本語が存在していますので、ここでは多様性という日本語を使います。Weblio辞書によりますと、多様性とは、「いろいろな種類や傾向のものがあること。変化に富むこと。」とあります。私は、基礎研究者であり臨床歯科医ではありませんので、もしかすると臨床医の先生方とは見方が違うかもしれません。私はこれまで、国内外で複数の研究施設で基礎研究に携わってきました。これらの経験を基に、この講演においては、多様性の定義、いわゆる「ダイバーシティー(多様性)」という意識づけと社会的誘導、そして科学の発展に寄与できる多様性の意味を再考したいと思います。